葡萄ジュースを飲みながら

マキシマムについて



今年の夏、女性は曇空でも向こうが透けるほど薄いガーゼを、
一段上がった地面の上のその踝まで伸ばして歩いていました。

私はロングスカートは滅多に着ないし一着も持っていません。
あれは背が高くすらりとした女性が身につけるのが様になる。

私の母は背が高く脚も長いし全体的に細身で憧れていました。
彼女は普段黒い服しか着ないし、スカートなんて絶対着ない。
それでも夏、故郷沖縄で趣味の貝探しに浜辺を一人で歩く時、
彼女の服は空色に白い花柄の袖無しロングワンピースだった。
ビーチサンダルを履いた爪先は、深爪でペディキュアはない。
化粧もしない(顔が濃いから限度が解らないのだといって)。
顔以外に日焼け止めも塗らず、赤く焼けた肌は綺麗じゃない。

でも、海から上がった私が見る母は、何ひとつ欠けていない。
海風に吹かれながら時折屈み、俯き加減で白い浜を歩く女性。
ひるがえる裾はひかえめで、綿の密度が太陽を反射している。
吹かれる体、風上に浮かぶ凹凸は幼い私の憧れで溢れていた。